2008/04/22

NSR

 
 
 
  
  軽くキックを落とした。
 
 
  ほぼ一週間ぶりの目覚めは最高だった。
 
 
  
  あら お久しぶりね
 
 
  
  赤い流線型のフォルムは白煙を上げながら挨拶をした。
  
 
  
  
  僕はヘルメットを被り、そしてハンドルを握った。
 
 
  
  
  初夏を思わせるような天気とねずみ色のコンクリートが
 
 
  頭上と足元に続いていた。
 
  
 
 
  
 
  
  そして 僕は右手を回した。
 
 
  
  体を突き抜けるような エンジンの音があたりに響いた
 
  
  
   
  サイドスタンドを左足で蹴り上げ、
 
  
  その足で ギアを落とした。
  
  
  
  握っていた左手を徐々に離していき
  
  
  
  車体と僕は 風とともに走り出した。
  
  
  
  
  行く手には カーブや交差点などさまざまな道が連なる
  
  
 
 
  
  
  しかし今日はいつもとは調子がおかしかった。
 
  
  
  
  ギア抜けが激しく、加速も悪かった。
  
  
  なによりもライディング自体がしっくりこなかった。
  
  
  
  病み上がりの体なので もともとコレくらいだったと思い込んでしまった。
  
  
  
  
  
  僕はついアクセルをいつも以上に回してしまった。
 
  
  
  
  
  そしてカーブに差し掛かったとき 僕は気が付いた。
  
  
  
 
 
  
  
  
  スピードが出すぎている。このままでは曲がれない。
  
  
  
  
  あわてて僕はギアを一気に3段落とした。フットブレーキもかけた。
  
  
 
 
  
  
  その途端 リアタイヤがロックした。
  
   
  
  リアが滑る感覚が 全身に伝わってくる。
 
 
  
  
  しかしこのまま曲がれることなど できない
  
  
  
  僕は体勢を立て直しつつ ブレーキをきつくかけた
  
  
   
   キキーーッ
  
  
   
  
  
  
  
  僕の描いたカーブは大きく膨らんでしまったが
  
  
  
  なんとか カーブを切り抜けた。
 
  
   
  
  冷や汗と同時に僕は考えた
  
 
  
 
 
 
 
 
  そういえば 僕とこいつとの付き合いはまだ半年にもなってない
 
  
  
  けど、もう15年も前に作られたバイクなんだ・・・
  
  
  
  エンジンからクラッチ系統、バルブにいたるまで
  
  
  前オーナーがOHしたとは限らない。
  
  
  
  
  実際走行距離が2万未満も 本当かどうかなど分からない。
   
  
  
  俺はこいつのことを 何一つ知らないというのに 
 
  
  乗りこなせるわけがない。
 
  
   
 
 
 
 
  
   ようやくわかったのね
  
  
  
  どこからともなく聞こえていたような気がした。
  
  
  
  
 
 
 
  僕らは 西日になった太陽に背を向け
  
  
  
  僕らの 家へと向かった。
  
  
  
  
  
  バイクを降りて ヘルメットを外したときまた声が聞こえた。
  
  
  
   よろしくね
 
  
  
   
  すっかり赤く染まった空が
  
  
  こいつの赤色をさらに赤く光らせていた。
  
  
  
  僕は車体にキスをして こう答えた
  
  
  
   よろしく  と
  
  
  

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

な・・・泣ける・・・w

うん、それじゃあそろそろ乗り換えの時期(ry

匿名 さんのコメント...

上の投稿俺です、さーせんww

匿名 さんのコメント...

乗り換えには早すぎるぜよ